万年主任の経済寺子屋

経済のことについて、いちから学べるような記事を書いていきます。

『財政政策』

こんにちは、万年主任です。

 

前回までは、主に日銀が行う金融政策についてのお話でした。

以前に景気対策には二種類、金融政策と財政政策があると言いましたが、今回は二つ目の財政政策についてのお話です。

keizai-study1.hatenablog.com

「財政政策」とは、政府が行う景気対策です。

景気の正体

財政政策とは、これを政府が強引、かつ大規模にやってしまおうというものです。

 

具体的には、インフラ整備などの公共事業を発注します。

道路を整備したり、橋を架けたりするやつですね。

お金を使うことが目的なので、必ずしも必要なものとは限らないのがポイントですね。

混んでる時期の道路工事なんかはよく批判されてますね。

対して、必要に差し迫られているものに出すお金は、財政支出と呼ばれます。

 

政府が公共事業にお金を出すとなぜ景気が良くなるかというのは、メカニズムは以前の記事で書いたのと同じ理屈です。

keizai-study1.hatenablog.com

政府が建設業者に公共事業を発注すれば、建設業者が儲かります。

さらに、その下請け、孫請け、材料メーカー、重機メーカー、警備会社など多くの会社が儲かります。

そしてその会社の業績が上がり、社員の給料がアップ、お金をたくさん使えるようになります。

たくさんお金を使う人が増えれば、世の中の会社が儲かり、さらに給料アップ、景気が良くなるというわけです。

この、良い循環がさらに良い循環を生むことを乗数効果といいます。

財政政策は、乗数効果のきっかけを作ろうというものです。

 

金融政策は、商売のしやすい環境を整えて景気を良くしようという政策でしたが、企業がお金を借りて設備投資しないことには効果は出ませんでした。

しかしこの財政政策では、政府が確実に大量のお金を使うので、金融政策よりも直接的に景気に影響を与えることができる、有効な手段なのです。

公共事業は、入札の経緯をめぐって色々な不正などもありますから、イメージが良くないのが残念です。

 

以上が、財政政策のざっくりとした解説でした。

それでは今日はこの辺りで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

『金融緩和政策とは?』

こんにちは、万年主任です。

 

前回は、ゼロ金利政策の話をしました。

景気対策金利を限りなくゼロに近づけるという内容でしたね。

しかし実際のところ、これだけでは景気は思ったように良くなりませんでした。

金融緩和政策

ここで思い出して欲しいのが、日銀の目的です。

物価を安定させ、経済を成長させることでしたね。

そのための手段として、金利を変化させたり、一般銀行と国債を取引しお金の量をコントロールしています。

詳しくは、

keizai-study1.hatenablog.com

を参照してください。

金利を変化させるゼロ金利政策が思ったような効果が得られなかったため、日銀はお金の量をコントロールすることで、景気を良くしようとしました。

これが、「金融緩和政策」です。

お金の量を増やして流通量を増やし、企業がお金を借りやすくしようという政策です。

この政策には二種類あって、一つ目は量的緩和政策』です。

一般銀行は、日銀にある当座預金の残高に比例してお金を企業に融資できるのですが、この残高を増やして、銀行が企業に貸せるお金を増やすという政策です。

 

もう一つが「包括的緩和政策」です。

こちらもお金の量を増やすという意味では、量的緩和政策や公開市場操作と同じです。

では何が違うのかというと、銀行から買い取るものが違います。

公開市場操作では、日銀は一般銀行から国債を買い取ります。

一方、包括的緩和政策ではリスク資産も買い取りの対象になります。

リスク資産とは、もしかしたら価値がなくなってしまうかもしれない資産のことです。

投資信託ETFJ-REITなどですね。買い取りの結果、銀行がたくさん現金を用意できて、企業にお金を貸しやすなり景気が良くなります。

 

ところで皆さん、この政策のやばさがわかりますか?

 

本来日銀は、資産運用をしているわけではないのでリスク資産を買う必要はありません。実際、過去に買ったことはないはずです。

例えば、お金の量が増え、インフレ率が上昇してきたら、日銀は物価を安定させるという役目も持っているため、金融引き締め政策を行うことになります。

引き締めの際は、日銀の金融資産を一般銀行に売るわけですが、その時、日銀の保有するリスク資産が無価値になっていたらどうなるでしょうか?

価値のないものは売ることができないので、日銀には市場の現金の量を減らす術はなくなります。

現金を回収できなければ、ただ単に市場に現金をばらまいたのと同じことになってしまいます。

お金をばらまくとどうなるのか?

インフレが進行してしまいます。

そうなると、物価は上がってるのにお金の価値は下がり、安全だと信じていた預金も実質的には目減りし、国民は大混乱になるはずです。

確率でいえば高くはないと思いますが、包括的緩和政策はこんな危険も孕んでいます。

 

かなりのリスクを取った包括的緩和政策ですが、結果はどうだったのかというと、効果は限定的なものでした。

不景気の中、企業がお金を借りやすいよう環境を整えても、設備投資をするような攻めの経営をする企業は少なかったようです。

不景気だと守りの経営をする企業が多いのでしょうかね。

 

以上が金融緩和政策のざっくりとした解説でした。

 

それでは今回はこの辺りで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

『ゼロ金利政策とは?』

こんにちは、万年主任です。

 

前回は日銀の政策の話をしましたが、今回も引き続きの内容です。

ゼロ金利政策

ゼロ金利政策の目的

ゼロ金利政策の功罪

預金より投資が良い?

 

 ゼロ金利政策 

日銀の政策の中で、皆さんの生活に直結するものといえば、「ゼロ金利政策」ではないでしょうか。

ゼロ金利政策というと大体の方は、銀行の預金金利をゼロにすることじゃないの? と思われるかもしれません。

結果的にはそうなってますが、厳密には銀行間の貸し借りの金利をゼロにするというものです。

無担保コール翌日物金利というものですね。

一般銀行の金利は、銀行自身が自由に決められますので日銀は間接的に関与しています。

これについては、

keizai-study1.hatenablog.com

で、詳しく触れていますので参考にしてください。

ゼロ金利政策の目的

ゼロ金利政策は、1998年の経済混乱期に一時的な緊急政策として始まりました。

1998年は、金融市場も混乱して銀行も経営状態が悪くなり、資金に余裕がンくなりました。そうなると、ちゃんとした優良企業にお金が回らなくなり、倒産する企業が増え、さらに混乱するのではないかと心配されました。

そこで日銀は、銀行間のお金の貸し借りの金利をゼロにすることで、資金の融通をしやすくし、優良企業にお金が回りやすくなるようにしました。

これが本来のゼロ金利政策の目的です。

ゼロ金利政策の功罪

資金が回りやすくなるという点では一定の成果のあったゼロ金利政策

しかし、負の側面もあって「不良債権の処理を遅らせているだけ」とい指摘もあるのです。

どういうことかというと、資金が回りやすくなるということは、ダメな企業にもお金が融資されてしまうという場面も多く出てきます。本来であれば、自然淘汰されるべき企業が延命されてしまい、貸したお金がなかなか回収できません。

結果、潜在的不良債権が残り続けることになります。

働いてる方には申し訳ないですが、ダメな企業は延命せずになくなって、優良企業に資源を集中させたほうが経済には良いですからね。

資金が回りやすいということは、良い面、悪い面があるということですね。

預金よりも投資が良い?

ゼロ金利政策では、投資に回されるお金も増えました。

銀行に預金していても利息がほとんどつかないので、それだったら投資に回そうと考えた人が増えたんですね。株やFXが流行りましたよね。

僕も、預金は生活防衛資金を最低限預けておくだけでいいと考えてます。

残りは投資に回すべきですね。

ゼロ金利政策の歴史

このゼロ金利政策ですが、さきほど一時的な緊急政策と言ったのには理由があって、実はずっと続いていたわけではないのです。

2000年に一旦は解除されたのですが、2001年の同時多発テロに伴う経済混乱で再導入されました。その後、2006年まで続きます。

しかし、2008年のリーマンショックで三度導入されました。

 

以上が日銀の政策、ゼロ金利政策のざっくりとした解説でした。

それでは今回はこの辺りで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

『マネーサプライとは?』

こんにちは、万年主任です。

前回までに、日銀はマネーの量をコントロールすることで物価を安定させ、

経済を安定成長させることを目指している、という話をしました。

なので、今回はどうやって日銀がマネーの流通量を把握しているか、というお話です。

 

マネーサプライ=お金の流通量

結論から言うと、「マネーサプライ」という指標で判断しています。

これは、お金の供給量という意味で、毎月調査しています。

ここでいう「マネー」とは、単に現金ということではなく、経済用語としてのマネーとなります。現金だけでなく、預金、郵便貯金などもマネーに含まれます。

なので、マネーの属性によって区別するために、4つに分類されています。

 

マネーの分類

1つ目は、「M1」といって、現金+預金です。

2つ目は、「M2」で、M1+定期預金になります。

3つ目は、「M3」で、M2+郵便貯金、農協、信金などの預金です。

4つ目が、「CD」と言って、聞きなれないと思いますが譲渡性定期預金と呼ばれるものです。

ざっくり言えば、他人への譲渡が可能な定期預金のことです。

マネーの流通量を調べる際、どこまで範囲に含めるかによって、M1(エムワン)、M2(エムツー)などと呼び方が変わります。

 

マネーサプライを調査する理由

では、なぜ日銀はマネーサプライを調べるのかというと、近い将来の売買の量(経済活動の量)の目安になるからです。

マネーの量が多いということは、今後世の中での売買が増加する(消費が上向き景気が良くなる)と予測できます。

逆に、マネーの量が少なければ、売買の量は減少する(消費が冷え込み、景気減速)可能性があります。

今後を予測することで、マネーの量の方向性を決めるのです。

日銀は、物価を安定させ経済を安定成長させるために、市場の金利を操作したり、公開市場操作をして、マネーの流通量を調整するという話はしましたね。

 

日銀は、こうして今後の売買の量を間接的に調整しているのです。

すごく微妙なかじ取りをしているわけですね。

 

それでは今日はこの辺りで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

『日銀は政府の傀儡?』

こんにちは、万年主任です。

 

前回は、日本の中央銀行である日銀についての話をしました。

そこで、日銀は日本の景気をよくするための金融政策を担っていると解説しましたが、同じく日本の景気をよくするために仕事をしている政府の指示を受けているの? と思われる方もいるかもしれません。

 

たしかに、日銀の総裁は内閣が任命しますので、そう思われるのも仕方ありません。

結論から言うと、日銀は政府からは独立した機関になっています。

これは、日本だけでなく海外でも同じです。

 

もし日銀が政府の支配下にある機関であった場合に起こる問題点を考えてみると、その理由がわかります。

政府は国をよくするために、様々な政策を実施しています。

ただ、その政策を実行するためには、莫大な資金が必要です。公共事業、インフラ整備、学校や病院などの公共施設を作ったりと、とにかくお金がかかります。

平成30年度の例ですが、国の政策などを実行するための支出が97.7兆円で、税収が59.1兆円です。全然足りてないですね。

この足りない分を政府は国債を発行して補うのですが、誰が買うのかというと日銀です。

日銀はお金を刷る権限があるので、理論上はいくらでも買えるわけです。ちなみに、発行済みの国債の大部分を持ってるのも、日銀と一般銀行です。

日銀が政府に言われるままに国債を買っていると、世の中に出回るお金の量が増えて、インフレが起きてしまうかもしれません。

日銀の役割の一つに、流通するお金の量をコントロールして物価を安定させるというものがあるので、真逆ですね。

お金がいくらでも出てくる財布があると、各省庁の概算要求通りの予算を渡してしまうかもしれないですし、選挙が近くなれば、支持率アップのためのバラマキ政策を国民に約束してしまうかもしれません。想像しただけでやばそうなのがわかりますよね。

 

こういった事態にならないように、日銀は政府から独立しているのです。

 

それでは今日はこの辺りで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

『日本の中央銀行』

こんにちは、万年主任です。

 

前回は、景気対策の話をしました。

そのなかで、景気対策を担う日銀という機関が出てきましたが、今日はその日銀の話です。

 

日銀とは、日本銀行の略称で、日本の中央銀行です。

中央銀行とは、国全体のことを考えて政策を行う銀行のことを言います。

日本では日銀ですが、アメリカではFRB連邦準備制度理事会)、ユーロだとECB(欧州中央銀行)といいます。

日銀の使命は、前回話したように国の金融政策を担うことで、物価を安定させ、経済を安定成長させることです。

 

そのために日銀は、三つの役割を持っています。

 

一つ目は、紙幣の発行です。

これは、日銀だけの重要な権限になります。

紙幣の偽造は国の信用に関わってくる犯罪なので、かなりの重罪になりますし、誰でも発行できてしまうとお金の価値が下がり、インフレになってしまいます。

紙幣の発行を日銀だけの権限とすることで、現金の量をコントロールして物価を安定させ、経済を安定させるのです。

 

二つ目の役割は、一般銀行のための銀行ということです。

これは、りそな銀行や三菱UFJ銀行といった一般のぎんこうが、日銀にお金を預けたり借りたりすることです。

以前、一般銀行の間でお金の貸し借りをするという話がありましたが、なぜ日銀から借りるの? と思われるかもしれません。

たしかに、他の一般銀行から必要な分だけすぐに借りられれば問題はないのですが、経営状態によってはそうもいかない時があります。リーマンショック級の経済危機は、残念ながら不定期でやってきてしまいます。

お金を借りられないことで、銀行が経営危機に陥ってしまえば、日本の経済に対する影響が大きすぎるので、日銀がお金を貸して安定させます。

これが一般銀行のための銀行という役割です。

 

三つ目の役割は、為替を安定させることです。

なぜかというと、為替は日本の景気と密接にかかわっているためです。

為替が安定しないと、海外と取引する貿易などの際、不利になります。

為替の急変動を抑えるため、時に日銀は為替に参入し取引します。

円高に振れていれば円を売り、円安になり過ぎていれば円を買います。

日銀は大量に資金を持っているので、為替に影響を与えることができるのです。

最近だと、つい先日トルコの中央銀行が為替介入したと言われていますね。

確証はないそうなのですが、多分価格の下落を防ぐためにトルコリラを大量に買ったとみられてます。

これが三つ目の役割です。

 

それでは今日はこの辺りで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

これが三つ目の役割です。

『景気対策って何?』

こんにちは、万年主任です。

 

前回は、景気対策は誰をターゲットにするかによなくなって、いくつか種類があるという話でしたが、今回はもう少し詳しく解説していきます。

 

景気対策には「金融政策」「財政政策」があります。

まずは、金融政策の話からです。

金融政策というのは、世の中に流通しているお金の量を調整して、

経済を安定成長させるために行う政策のことです。

基本的にお金の量を増やせば、国民にお金が行き渡り、物がたくさん買えるようになり、結果企業が儲かり景気が良くなります。

逆にお金の量を減らすと、お金がなくなくなるので物が買えなくなり、企業が儲からず、景気が悪くなります。

ここまではいつものロジックですね。

では、どうやってお金の量を調整するのか? ということですが、2つあります。

一つ目が金利の操作です。

日銀は政策金利を操作することによって、お金の量を調整しています。

以前は公定歩合といって、銀行が日銀からお金を借りる時の金利を上げ下げすることによって操作していました。   

 

公定歩合を上げることで、銀行は日銀に多くの利息を支払わなければならなくなります。そうなると、銀行からお金を借りる企業や国民も高い金利で借りないといけません。

結果、借りる人は減り、お金の流通は減ることになります。

逆に公定歩合を下げると、銀行・国民が安い金利でお金を借りられるので、お金の流通量は増えることになります。

ただし、先ほど『以前は』といった通り、1996年の金融緩和によって、

銀行が自由に設定できるようになりました。

そのため、日銀は直接金利に関与することはできなくなりましたが、

間接的に関与する形になりました。

 

その方法ですが、少々複雑です。

銀行には、決められた額を日銀に預けておかなければならないという法律があります。

これを法定準備金といいます。

銀行は、個人や企業にお金を貸して、その利子で儲けているのですが、

お金を貸しすぎると、日銀に預けなければならない法定準備金が足りなくなる時が出てきます。

そんな時に、一時的にほかの銀行からお金を借りて急場を凌ぎます。

このほかの銀行からお金を借りる時の金利無担保コール翌日物金利といいます。

日銀は、この無担保コール翌日物金利を操作するのです。

公定歩合のように、直接操作はできませんが、間接的にお金の量を調整しているのです。

 

そして、二つ目に出回っている現金の量を増やすという方法があります。

日銀は、銀行が持っている債件を購入することにより、銀行の手持ちの現金を増やします。

銀行は債券を持っていても、銀行や個人にお金を貸すことはできませんが、債券が現金になれば貸すことができるようになります。

その結果、企業や個人はお金を借りられるようになり、消費がアップして景気がよくなります。

この施策を、公開市場操作といいます。

 

以上のように、お金の流通を増やす政策のことを「金融緩和政策」といいます。

これに対して、お金の流通量を減らす政策のことを「金融引き締め政策」といいます。

金融緩和政策とは逆に、銀行に債券を売ることで、銀行が持っている現金の量を減らします。すると、銀行は企業や個人に貸せる現金が減るため、景気が減速します。

 

ここまでが、基本的な金融政策のざっくりとした解説になります。

 

次回はもう一つの景気対策、財政政策についてお話ししたいと思います。

 

それでは今日はこの辺りで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。